当店の理念は「無意味な殺生はしない。奪う命は最小限に、奪った命は無駄にしない」。人の安全のために駆除したオオスズメバチを、標本という形で残す——その手順を、元養蜂家が図解で解説します。道具は5,000円前後でそろいます。ただし死骸でも毒針は動きます。安全の話から始めます🐝
※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。※記事内の画像は手順をわかりやすく示すためのイメージ図です。
当店は殺虫剤を使わない「レスキュー」を名乗っていますが、オオスズメバチの巣のように、人の安全のために命を奪わざるを得ない場面は確かにあります。そのとき私が大切にしているのが「奪った命を無駄にしない」という考え方です。
オオスズメバチは、世界最大級のスズメバチ。その体のつくりは本当に精巧で、じっくり見る機会はふつうありません。標本にすれば、その姿を壊さずに残し、子どもたちの学びや観賞の対象として「命を次につなぐ」ことができます。当店でも、現場で回収した個体を標本にする取り組みを進めています。
専門店でなくても、ネット通販と100円ショップでほぼそろいます。昆虫針だけは届くまで数日かかるので、最初に注文しておくのがコツです。
回収した個体。体長4cm超、頭部の大きさが特徴です(イメージ図)
①回収 → ②展翅前 → ③翅を広げて固定 → ④脚・触角を整える → ⑤乾燥・固定(イメージ図)
回収した個体をジッパー袋に二重に入れて冷凍庫へ。確実に死亡させ、体についたダニや寄生虫も処理します。ここを省くと、あとでケースの中が大変なことになります。家族の食品と分けるため、袋の外側にラベルを貼っておくと安心です。
冷凍した個体はカチカチで、無理に脚を動かすと折れます。解凍後、密閉容器に湿らせたティッシュと一緒に入れて半日〜1日置くと、関節がしなやかに戻ります。この「軟化」が、きれいに仕上がるかどうかの分かれ道です。
昆虫針を胸部(翅の付け根のやや右寄り)に垂直に刺します。中央ではなく右寄りに刺すのは、昆虫標本の世界共通のお作法。針の頭から体までの高さをそろえると、あとで並べたときに美しく見えます。
発泡スチロール板に針を刺して固定し、翅を左右対称に広げ、細く切った紙テープとまち針で押さえます。脚は「前脚は前へ、中脚・後脚は後ろへ」が基本形。触角は前方へハの字に。ここがいちばん時間のかかる工程で、ピンセットで1本ずつ整えます。焦らず、蜂の体のつくりをじっくり観察する時間だと思ってください。
整えた状態のまま、シリカゲル入りの密閉容器で2〜3週間じっくり乾かします。ここを急ぐのが最大の失敗原因。生乾きのままケースに入れると、カビが生えたり腐敗したりします。直射日光は色あせの原因になるので避けてください。
小さな紙に採集日・採集地(市町村まで)・種名を書き、針に通します。「いつ・どこで」の記録があるだけで、標本の価値はぐっと上がります。当店の場合は「2026年8月・安曇野市・オオスズメバチ(働き蜂)」のように書きます。
完全に乾いたら、コレクションケースに防虫剤と一緒に収めます。防虫剤は半年ごとに交換。湿気の少ない、日の当たらない場所に置けば、何年も姿を保ちます。
展翅・展足が終わった状態。ここから2〜3週間の乾燥に入ります(イメージ図)
通販で選ぶ場合の参考に置いておきます(価格・在庫はリンク先でご確認ください/広告リンクです)。
スズメバチは食用や薬用(蜂酒など)の文化もありますが、この記事で扱う標本は観賞・学習のためのものです。自宅で作る分には特別な許可は不要ですが、生きた蜂の採取は大変危険です。繰り返しになりますが、標本にするのは駆除後に回収された個体に限ってください。
なお、巣そのものを残す「巣のオブジェ」や、秋のスズメバチの危険性については、今後のコラムでお話しする予定です。オオスズメバチの巣を見つけてしまった方は、まず その蜂の巣、放置するとどうなる? をご覧のうえ、早めにご相談ください。